コロナ騒動の中気が付いたこと

新型コロナの影響で「どっぷり昭和町」が中止になってしまいました。
感染の拡大とか人々の健康を考えると仕方がないのは分かるのですがやはり気持ちとしては寂しいなぁ、と。
阿倍野に引っ越してジェラート屋始めて以来、毎年出店するのを楽しみにしていたイベントだったんですよ。
売上だって正直なところ期待してた訳でもありますし。

僕みたいな個人の飲食店は結局のところ自転車圏内の方にどれだけ楽しんでもらえるか、を商いの基本において考えないといけないのだろうと常々思っています。もちろん遠方からのお客さんを考えないということではなく(それもとても大事なことです)日々のわずかな利益は地元の方に喜んでいただくことでちょっとづつ積み上げていく、という意味です。

今回のコロナ騒ぎの中でいろいろ考えることがありました。
僕は普段ジェラートを販売しているのですが、お客さんはジェラートなり生チョコなどだけを購入している訳ではないんだよなぁ、と思うようになりました。
どういうことかというと、ここ最近の外出自粛ムードの中でもお店にいらして下さるお客さんを見たり、社会的距離をとりながらお話したりしていると、コロナウイルスによる自粛ムード、その中で終息の目途が見えないことによる心理的不安や、そこから感じるストレス、すっきりとしない気分をほんの一時弛緩させる、ホッとできる、笑顔になれるものを求めてうちのジェラートを買ってくれているんだろう、と思うようになった、ということです。

そんなの当り前じゃないか、客商売、BtoCの商いの基本だよ。そんなこともお前は知らなかったのか、と言われそうですが、理屈として理解したつもりになっていることと、実際にお客さんからそれを実感させられることとは全く違う、というのをしみじみと思いました。

言うならば僕は癒しを販売している「癒しの伝道師」なのですね。
うわー気持ち悪い、50を前にしたおっさんが癒しとか、ペッペッ!!となると思いますが事実なのでぐっとこらえてください。
でも自分がジェラートや生チョコに形を変えた、「癒し」なり「安らぎ」みたいなものを販売しているんだと思うとなんだか以前よりこの仕事に誇りを感じることができるような気がします。

これからもより多くの方々に癒しやホッとして笑顔になれる瞬間をお届けできるようになれば良いなと考えています。
なので、僕はある意味生活必需品を販売していることになるので、当面は手洗い、消毒、換気をこまめにして営業を通常通り続けていこうと思います。

ゴッホ~最後の手紙~

先日、久しぶりに映画館に行きました。見た映画は「ゴッホ~最後の手紙~」
http://www.gogh-movie.jp/

「ゴッホのタッチを再現しながら描かれた”動く油絵”」という斬新な取組でゴッホの死の謎に迫っていく物語ですが、ぐっと引き込まれる映画でした。
おそらくゴッホが見ていたであろう、感じていたであろう世界の見え方で彼の晩年を追体験していくという体験は非常に興味深いものでした。

僕がアルル、パリ、オーヴェールを訪れてもおそらく見えないであろう世界、光のありようをこの映画で見ることができたのだろうという気がしました。

僕はかねてから音楽や絵画などの「天才」と言われる人の世界の見え方に興味があったのですが、「彼らの描いた世界が動く」ということによってその世界に入り込めたことは、それがたとえ擬似的であったとしても大変素晴らしい体験でした。
僕の見ている風景と、「天才」と呼ばれている人に見えている風景はおそらく異なっているのではないかと思っているのですが、彼に見えている世界は今の僕たちと同じように悪意や絶望や勘違いに満ちていようとも(もちろん希望や穏やかさや善意も同じようにありますが)僕が見ている世界より随分と柔らかいものではなかったかと感じます。

ゴッホの描く人物や世界に感じられる力強さの中にある優しさや暖かさ、そして悲しみは彼の世界では可視化されており、それを絵画で表現しているのではないかという気がします。

この映画の監督のゴッホの絵を動かし物語を作ろうとした発想とそれを実際に作り上げた行動力はまったくもって驚くばかりです。
思い出してはウーンと考えてみたりニヤニヤしたりしてしまういつまでも考えさせられて得した気分になる映画でした。