ゴッホ~最後の手紙~

先日、久しぶりに映画館に行きました。見た映画は「ゴッホ~最後の手紙~」
http://www.gogh-movie.jp/

「ゴッホのタッチを再現しながら描かれた”動く油絵”」という斬新な取組でゴッホの死の謎に迫っていく物語ですが、ぐっと引き込まれる映画でした。
おそらくゴッホが見ていたであろう、感じていたであろう世界の見え方で彼の晩年を追体験していくという体験は非常に興味深いものでした。

僕がアルル、パリ、オーヴェールを訪れてもおそらく見えないであろう世界、光のありようをこの映画で見ることができたのだろうという気がしました。

僕はかねてから音楽や絵画などの「天才」と言われる人の世界の見え方に興味があったのですが、「彼らの描いた世界が動く」ということによってその世界に入り込めたことは、それがたとえ擬似的であったとしても大変素晴らしい体験でした。
僕の見ている風景と、「天才」と呼ばれている人に見えている風景はおそらく異なっているのではないかと思っているのですが、彼に見えている世界は今の僕たちと同じように悪意や絶望や勘違いに満ちていようとも(もちろん希望や穏やかさや善意も同じようにありますが)僕が見ている世界より随分と柔らかいものではなかったかと感じます。

ゴッホの描く人物や世界に感じられる力強さの中にある優しさや暖かさ、そして悲しみは彼の世界では可視化されており、それを絵画で表現しているのではないかという気がします。

この映画の監督のゴッホの絵を動かし物語を作ろうとした発想とそれを実際に作り上げた行動力はまったくもって驚くばかりです。
思い出してはウーンと考えてみたりニヤニヤしたりしてしまういつまでも考えさせられて得した気分になる映画でした。